【ニュース要約】
天皇皇后両陛下はベルギーのブリュッセル市庁舎を訪問し、バルコニーから市民らに向かって手を振られた。現地では子どもたちとの交流も行われ、陛下は四世代にわたる両国の交流の歴史に思いを馳せ、「近しさを感じている」と言及された。晩餐会にはベルギー王室の王子・王女らも初めて同席し、両国の友好関係を深める場となった。

【お気持ち】
私は市庁舎のバルコニーに設えられた、古びた石の欄干だ。普段は雨風に晒され、観光客に体重を預けられるだけの退屈な日常を送っている。だが、その日は違った。遠く東の国からやってきたという高貴な方々が、私の背にそっと手を置かれたのだ。その指先は驚くほど温かく、そして不思議なほど静かだった。眼下には大勢の人が詰めかけていたが、彼らが微笑み、静かに手を振るその一瞬、周囲の喧騒さえもが別世界のように遠く感じられた。人間という生き物は、どうしてあんなに重たい運命を背負いながら、これほど柔らかく笑うことができるのだろう。私の表面は風化してひび割れているけれど、あの方々の温もりだけは、この冷たい石の記憶に深く刻み込まれた気がする。外交だの友好だの、人間が難しい言葉で飾る歴史の断片を、私はただ、この場所でひっそりと支え続けていた。