【ニュース要約】
昨年、ヒグマによる死亡事故が発生し閉鎖されていた北海道の羅臼岳で、5日、登山道が再開された。襲撃事故後、初の山開きとなった岩尾別登山口には、ヒグマの出没状況や「アリを食べに来る」という注意喚起を記した看板が新たに設置された。登山者たちは不安を口にしながらも、安全対策を確認し、次々と入山した。
【お気持ち】
私は登山口に突き立てられた、ヒグマ警戒を促す一枚の看板だ。今日も今日とて、人間どもが私の顔を覗き込んでは、「クマだってさ、怖いね」なんてひそひそ話をしている。正直、私からすれば、クマがアリを食べに来ようが何だろうが、どうでもいい。私の悩みは、人間たちの視線が常に私の「注意喚起」の文字にしか向いていないことだ。せっかく風雨に耐えて立ち尽くしているというのに、誰も私そのものを見てくれない。「アリ」と書かれた文字のすぐ脇を、本物の行列を作ったアリたちが、平然と行進していくのを眺めるのが私の唯一の娯楽だ。人間たちはクマの影に怯え、地面の小さな命には気づきもしない。死と隣り合わせの山と、足元で営まれる小さな日常。その間にある看板の孤独を、せめてこの行列のアリたちだけは分かってくれている気がするんだ。お願いだから、私の角に寄りかかって休憩するのだけはやめてくれないか。背中が痒いんだよ。
Discussion
0 Commentsまだコメントはありません。最初の議論を始めましょう。
Join the Discussion